成年後見でできること・できないことと申立ての流れを解説

こんにちは。こだま司法書士です。

親の認知症が進み、預貯金の管理、施設入所契約、不動産の売却、遺産分割協議などを家族だけで進められなくなったとき、「成年後見を申し立てたほうがよいのか」「一度始めると、どこまで生活が変わるのか」と迷う方は少なくありません。そうですよね。制度名は聞いたことがあっても、実際に何ができて、何ができないのかまでは分かりにくいかなと思います。

成年後見制度は、判断能力が十分ではない本人の権利と財産を守るために、家庭裁判所が成年後見人、保佐人、補助人などを選任し、本人の法律行為や財産管理を支援する制度です。家族が本人名義の預貯金や不動産を自由に動かすための制度ではありません。制度の中心にいるのは、あくまで本人です。

そのため、申立てをした後に希望どおりの親族が選ばれないこと、申立てを自由に取り下げられないこと、後見人等に報酬が発生する可能性があること、家庭裁判所への定期報告が必要になることまで含めて検討する必要があります。目の前の預金解約や不動産売却だけで判断すると、開始後の長期的な負担を見落としやすい点には注意が必要です。

この記事では、法定後見と任意後見、後見・保佐・補助の違い、申立ての流れ、後見人等の職務、費用、司法書士が支援できる範囲まで、現行制度を中心に詳しく整理します。制度改正の動きについても、今すぐ利用できる制度と、成立していても未施行の内容を分けて確認します。

  • 成年後見制度の目的と3類型の違い
  • 申立てできる人と家庭裁判所の手続き
  • 後見人等の職務とできないこと
  • 司法書士が支援できる範囲と専門家連携

成年後見制度の基本

成年後見制度を検討するときは、本人の診断名だけを見るのではなく、本人の判断能力、必要な法律行為、財産の内容、家族関係、現在の生活環境を分けて確認します。認知症と診断されたからといって、直ちに後見開始になるわけではありません。

大切なのは、本人が具体的な手続きの意味や結果を理解し、自分で選択できるかどうかです。たとえば、日常の買い物はできても、不動産売却の条件や遺産分割協議の法的な意味を理解することが難しい場合があります。判断能力は「ある・ない」の二択ではなく、行為の難しさによっても見え方が変わります。

一方で、本人が契約内容や財産処分の意味を十分に理解できない状態では、家族の判断だけで預金解約、不動産売却、遺産分割協議を進めることは難しくなります。本人名義の財産は、家族の財産ではありません。家族が本人のためを思って動いていても、法的な権限がなければ手続きを受け付けてもらえないことがあります。

まずは「何の手続きが止まっているのか」「本人はどこまで理解できるのか」「制度開始後も継続して管理が必要か」を切り分けること。ここが成年後見制度を正しく選ぶ出発点です。

親の認知症に備えて成年後見制度を検討する日本人親子

成年後見制度の目的

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより物事を判断する能力が十分ではない方について、本人の権利を守る人を選び、本人を法律的に支援する制度です。制度の目的は、本人の意思を無視して周囲が管理しやすくすることではありません。

中心にある考え方は、本人の権利、生活、財産を守りながら、本人が持っている能力をできる限り生かすことです。本人に判断できる部分が残っているなら、その意思を確認し、本人が望む生活に近づけるように支援します。

成年後見人等は、本人の生活費や医療費を支払い、介護サービスや施設入所の契約を行い、預貯金や不動産を管理します。ただし、家族の相続対策や家計の都合を優先して本人の財産を使うことはできません。本人の財産から親族へ多額の贈与をしたり、相続税対策だけを目的に資産を減らしたりする行為は、本人の利益との関係で慎重な判断が必要です。

成年後見は本人のための制度です

後見人等は、家族全体の都合ではなく、本人の利益を基準に職務を行います。本人の生活費、医療費、介護費、不動産の管理、契約手続きなどについて、本人の意思やこれまでの生活歴をできる限り踏まえて判断します。

「家族が助かるか」ではなく、「本人にとって必要で合理的か」が軸。ここを外すと、制度の使い方そのものがずれてしまいます。

制度の基本や申立書式は、(出典:裁判所「後見ポータルサイト」)で確認できます。実際の申立てでは、本人の状態と手続きの目的を整理したうえで、管轄家庭裁判所の運用も確認することが大切です。

後見・保佐・補助の違い

現行の法定後見制度には、後見、保佐、補助の3類型があります。違いは、本人の判断能力の程度と、成年後見人、保佐人、補助人に認められる代理権、同意権、取消権の範囲です。

ここで注意したいのは、「認知症だから後見」「軽度だから補助」と診断名や印象だけで決めるものではないことです。医師の診断書は重要ですが、家庭裁判所は本人の生活状況、財産管理の状態、具体的に必要な法律行為なども踏まえて判断します。

法定後見の3類型
類型 対象となる方 主な権限 実務上のイメージ 注意点
後見 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 成年後見人に広い代理権があり、日常生活に関する行為を除き取消しが問題になります 財産全体を継続的に管理し、本人に代わって多くの法律行為を行います 本人の財産全体が継続的な管理対象となり、家庭裁判所への報告も重要です
保佐 判断能力が著しく不十分な方 重要な法律行為について同意権・取消権があり、申立てにより特定の代理権を付与できます 本人が行う重要な契約を確認しつつ、必要な手続きだけ代理する設計が可能です 代理権付与には、原則として本人の同意が必要です
補助 判断能力が不十分な方 申立てにより特定の法律行為について代理権や同意権・取消権を付与できます 本人の自立を尊重しながら、必要な行為に範囲を絞って支援します 本人以外の申立てでは、原則として本人の同意が必要です

代理権・同意権・取消権を分けて考える

代理権は、本人に代わって契約や手続きを行う権限です。同意権は、本人が一定の重要な法律行為をするときに、保佐人や補助人の同意を必要とする仕組みです。取消権は、必要な同意を得ずに行われた法律行為などを、後から取り消すための権限です。

この3つは似ているようで役割が違います。たとえば、不動産売却を本人に代わって進めたいなら代理権が問題になります。本人が高額な契約を単独で結ぶ危険を減らしたいなら、同意権や取消権が重要です。

後見は広い権限が認められる反面、本人の財産管理が長期的に家庭裁判所の監督下に入ります。保佐や補助は、本人に必要な支援内容に応じて権限を定めやすい仕組みです。ただし、希望した権限が必ず付与されるわけではなく、家庭裁判所が必要性と相当性を確認します。

法定後見と任意後見

成年後見制度には、判断能力が不十分になった後に家庭裁判所へ申し立てる法定後見と、判断能力があるうちに将来の代理人を契約で決める任意後見があります。

法定後見は、すでに本人だけで重要な法律行為を行うことが難しくなった場面で利用します。誰を後見人等にするかは家庭裁判所が決めるため、家族が希望した人が選ばれるとは限りません。

任意後見は、本人が契約内容を理解できるうちに、将来支援してほしい人と代理権の範囲を決めて、公正証書で契約します。ただし、契約を結んだだけですぐに任意後見人として活動できるわけではありません。本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で効力が生じます。

法定後見と任意後見の違い
項目 法定後見 任意後見
利用する時期 本人の判断能力が不十分になった後 本人に判断能力があるうちに契約し、低下後に監督人選任で効力が生じます
支援する人 家庭裁判所が後見人、保佐人、補助人を選任します 本人が任意後見受任者を選び、公正証書で契約します
権限 民法と家庭裁判所の審判により定まります 任意後見契約で定めた代理権の範囲に限られます
取消権 類型に応じて取消権が認められます 原則として法定後見のような取消権はありません
監督 家庭裁判所が後見人等を監督し、監督人が付く場合もあります 任意後見監督人が任意後見人の事務を監督します
本人の意思の反映 本人の意向は考慮されますが、選任は家庭裁判所が判断します 元気なうちに支援者と代理権の範囲を本人が設計できます

任意後見には原則として取消権がありません

任意後見人は、契約で定めた代理権の範囲で本人を支援します。本人がした不利益な契約を、任意後見人であることだけを理由に取り消せる制度ではありません。悪質商法や浪費への対応を重視する場合は、この違いを理解したうえで制度を比較する必要があります。

本人に判断能力がある段階で将来の備えを考える場合は、生前対策・認知症対策で、任意後見、財産管理委任契約、見守り契約、家族信託、遺言書などを比較しておくと整理しやすくなります。ひとつの制度ですべてを解決しようとせず、目的ごとに組み合わせる考え方も大切です。

成年後見を検討する場面

成年後見が必要かどうかは、本人に必要な手続きと、その内容を本人が理解して判断できるかで考えます。単に高齢だから、物忘れがあるからという理由だけで決めるものではありません。

施設入所や介護契約のため成年後見を相談する日本人家族

成年後見を検討しやすい場面

  • 本人名義の定期預金の解約やまとまった支払いが必要
  • 本人が施設入所契約や介護サービス契約を理解して結ぶことが難しい
  • 本人が相続人となる遺産分割協議を進める必要がある
  • 本人の居住用不動産の売却や賃貸借の終了を検討している
  • 本人の財産を第三者や家族による不正利用から守る必要がある
  • 年金や家賃収入を管理し、医療費や施設費を継続的に支払う必要がある
  • 消費者被害や不要な契約を繰り返すおそれがある

預貯金の管理で止まるケース

本人名義の口座から生活費を引き出しているだけなら、家族が事実上対応できていることもあります。しかし、定期預金の解約、大口送金、口座名義人の意思確認が必要な手続きでは、金融機関から本人の判断能力や代理権を確認されることがあります。

家族だから当然に代理できるわけではありません。本人のための支出であっても、権限なく手続きを進めると、後から親族間で使途をめぐる疑いが生じることもあります。記録を残し、必要なら法的な権限を整えることが重要です。

遺産分割協議で止まるケース

本人が相続人となる場合、遺産分割協議の意味や結果を理解して判断することが難しいと、協議全体が止まることがあります。本人に不利な内容で他の相続人が勝手に合意することはできません。

後見人等が本人を代理して遺産分割協議に参加する場合でも、本人の法定相続分や今後の生活費を踏まえた判断が必要です。後見人等自身も共同相続人である場合は利益相反となり、特別代理人など別の手続きが必要になることがあります。

不動産が含まれる相続では、遺産分割協議と相続登記がつながるため、相続登記の手続きもあわせて確認します。

不動産売却が必要なケース

施設費や医療費を確保するため、本人が住んでいた自宅を売却したいケースもあります。しかし、本人が売却条件を理解できない場合、家族だけで契約することはできません。成年後見人等に売却の代理権があるか、居住用不動産に該当するか、家庭裁判所の許可が必要かを確認します。

売却代金は家族のものになるわけではなく、本人の財産として管理されます。売却ができれば終わりではなく、その後の預金管理や生活費の支払いまで続く点も見落とせません。

他制度で対応できる場面

成年後見は便利な代行制度ではなく、開始後は原則として本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続きます。そのため、本人にまだ判断能力がある場合や、必要な手続きが限定的な場合は、他の方法で足りることもあります。

逆に、判断能力がすでに不十分な状態で、過去に任意後見契約や財産管理委任契約を結んでいない場合、後から新しい契約を作ることは難しいことがあります。制度を選べる時間には限りがあるということです。

成年後見以外の制度を検討する例
場面 検討する制度 成年後見との違い 注意点
本人に十分な判断能力がある 任意後見契約、財産管理委任契約、見守り契約 本人が支援者や権限を契約で決められます 契約内容を理解できることが前提です
特定の財産管理を家族に任せたい 家族信託 信託した財産の管理を契約で設計します 身上保護やすべての財産管理を当然にカバーする制度ではありません
死亡後の財産承継を決めたい 遺言書 生前の財産管理ではなく、死亡後の承継を定める制度です 遺言書だけでは認知症後の財産管理はできません
日常生活上の支援が中心 地域福祉権利擁護事業、福祉サービス、見守り支援 日常的な金銭管理や福祉サービス利用を支援します 不動産売却や遺産分割などの代理権はありません
財産の所在が分からない 財産目録、生活書類の整理 制度選択の前に、財産と契約を把握する段階です 通帳、保険証券、固定資産税通知書、借入資料などを確認します

死亡後の財産承継を決めたい場合は、成年後見ではなく遺言書作成サポートが関係します。財産や契約の棚卸しから始めたい場合は、財産・生活の整理で全体像を確認しておくと、後見申立てが本当に必要か判断しやすくなります。

制度は目的から逆算して選びます

「認知症対策だから成年後見」と最初から決めるのではなく、預金管理、住まい、介護契約、不動産、相続、死亡後の承継を分けて考えます。目的が違えば、適した制度も違います。

後見人等の主な職務

成年後見人等の職務は、大きく分けると財産管理と身上保護です。どちらも本人の利益を守るための法律行為や事務管理であり、家族の都合を優先するものではありません。

成年後見人が高齢者の預貯金と不動産を管理する場面

後見人等の主な職務
区分 内容 具体例 実務上の注意
財産管理 本人の預貯金、不動産、収支、債権債務を管理します 生活費や医療費の支払い、通帳管理、財産目録作成、保険契約の確認 本人のお金と後見人自身のお金を混ぜず、領収書や入出金記録を残します
身上保護 本人の生活や療養に必要な契約や手配を行います 介護サービス契約、施設入所契約、医療費支払い、住環境の調整 本人の意思、心身の状態、生活歴を踏まえて支援内容を選びます
法律行為の代理 付与された代理権の範囲で本人に代わって手続きを行います 預金解約、不動産管理、遺産分割協議、各種契約の締結 保佐・補助では代理権の範囲が限定されるため審判内容を確認します
家庭裁判所への報告 後見事務の状況を家庭裁判所へ報告します 財産目録、収支予定表、事務報告書、通帳写しの提出 提出時期や書式は家庭裁判所の案内に従います

財産管理は「保存・支払い・記録」が基本

後見人等は、本人の財産を増やすために積極的な投資をする立場ではありません。本人の生活を安定させ、必要な費用を支払い、財産を安全に保つことが基本です。元本割れの可能性がある投資、家族への貸付け、本人の利益が不明確な支出などは慎重な判断が必要です。

通帳、現金、証券、不動産、保険、負債を把握し、本人の収入と支出を継続的に管理します。現金払いが多いと使途確認が難しくなるため、振込みや口座振替を利用し、領収書を保管するなど、後から説明できる状態にしておくことが大切です。

身上保護は本人の生活を法律面から支えること

身上保護とは、後見人等が本人を直接介護することではありません。介護サービス事業者や施設との契約、医療費や施設費の支払い、住まいの確保などを通じて、本人の生活を法律面と財産面から支えることです。

本人が「できる限り自宅で暮らしたい」と希望しているなら、その意思も重要な判断材料になります。財産だけを見て最も安い選択をするのではなく、安全性、介護体制、家族との関係、本人の希望を総合して考えます。

本人が相続人となる場合、後見人等が本人を代理して遺産分割協議に参加することがあります。ただし、後見人等と本人が共同相続人であるなど利益相反がある場合は、特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人などが必要になることがあります。

居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要です

成年後見人が本人の居住用不動産を売却、賃貸、賃貸借解除、抵当権設定などで処分する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。施設入所後の実家を売却する場面でも、本人の生活費、帰宅可能性、今後の住まい、売却条件を慎重に確認します。

許可を得ずに処分すると、行為の効力が問題になる可能性があります。売買契約を先に進めるのではなく、必要な許可と手続き順序を事前に確認することが大切です。

後見人等ができないこと

後見人等は、本人に関するすべてを代わりに決められるわけではありません。職務の中心は法律行為と財産管理であり、身体介護や日常的な家事そのものは本来業務ではありません。

後見人等の一般的な職務に含まれないもの

  • 食事介助、入浴介助、排せつ介助などの身体介護
  • 清掃、洗濯、買い物、通院の付き添いなどの事実行為そのもの
  • 本人の債務を後見人自身が保証すること
  • 本人の利益にならない家族への贈与や支出
  • 医療行為への同意を、本人に代わって当然に決定すること
  • 婚姻、離婚、認知、養子縁組など本人だけが行う身分行為
  • 遺言書を本人の代わりに作成すること

介護契約はできても、介護そのものをする義務はない

後見人等は、介護サービスや施設入所の契約を結び、費用を支払うことがあります。しかし、実際の介護や清掃を後見人自身が行う義務があるわけではありません。必要なサービスを探し、契約し、本人の財産から適切に費用を支払うことが職務の中心です。

医療同意は別の問題

手術や治療に関する医療同意は、財産管理や契約代理とは異なる性質を持ちます。成年後見人だからといって、あらゆる医療行為に本人の代わりに同意できると単純に考えることはできません。医療機関、家族、福祉関係者と連携し、本人の意思や過去の希望をできる限り確認する必要があります。

遺言は本人自身の意思で行う

後見人等が本人のためを思っていても、本人に代わって遺言書を作ることはできません。遺言は本人自身の最終意思を表す行為だからです。成年被後見人が遺言をする場合には、法律上の特別な要件が問題になるため、個別に確認が必要です。

支援信託・支援預貯金

本人の財産を安全に管理するため、家庭裁判所の判断で、後見制度支援信託や後見制度支援預貯金の利用を検討することがあります。

後見制度支援信託は、日常的な支払いに必要な金銭を後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みです。後見制度支援預貯金は、信託に代えて金融機関の専用口座を利用する仕組みです。

手元で管理する金額を必要な範囲に絞ることで、不正利用や管理ミスの危険を小さくしやすくなります。一方で、大きな支出が必要になったときは、家庭裁判所への手続きが必要になるため、通常口座のように自由に引き出せるわけではありません。

払戻しには家庭裁判所の関与が必要です

支援信託や支援預貯金を利用すると、信託財産や支援預貯金口座から払戻しをする際に、家庭裁判所が発行する指示書が必要になるのが通常です。本人の財産保護と後見人の管理負担の軽減を両立するための仕組みです。

すべての事案で利用されるわけではありません。本人の財産額、毎月の支出、今後予定される施設費や不動産修繕費、後見人候補者の状況などを踏まえて検討されます。

申立て後の流れと注意点

成年後見の申立ては、家庭裁判所に書類を出せば希望どおりの人が選ばれる、という単純な手続きではありません。申立人、申立先、診断書、本人情報シート、財産資料、候補者の事情などを家庭裁判所が確認し、本人に必要な支援を判断します。

申立ての準備では、本人の戸籍や住民票だけでなく、預貯金、不動産、保険、有価証券、負債、収入、支出などを一覧にします。財産の全体像が不明なままでは、家庭裁判所も適切な支援内容を判断しにくくなります。

また、申立ての目的が不動産売却や遺産分割協議であっても、後見等が開始されれば、その手続きが終わった後も継続的な財産管理が必要になるのが通常です。目先の一件と、その後の長期管理をセットで考えることが大切です。

専門家と家庭裁判所への成年後見申立書類を準備する日本人

申立人と申立先

後見開始、保佐開始、補助開始の申立ては、本人、配偶者、四親等内の親族などが行えます。任意後見契約が登記されている場合は、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人が申し立てられる場合もあります。身寄りがなく、福祉上の必要性が高い場合には、市区町村長による申立てが検討されることもあります。

申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。一般には本人の生活の本拠を基準に確認します。住民票上の住所と実際の施設所在地が異なる場合などは、どこが管轄になるかを事前に確認したほうが安心です。

申立ての一般的な流れ
段階 確認すること 主な資料 注意点
相談・方針整理 本人の状態、必要な法律行為、財産、家族関係を確認 相談メモ、家族関係図、手続き資料 後見以外の方法で足りるかも検討します
資料収集 本人・親族関係、判断能力、財産と収支を把握 戸籍、住民票、診断書、本人情報シート、財産資料 不足資料があると追加提出を求められることがあります
申立書類作成 申立ての理由、候補者、財産、収支を記載 申立書、事情説明書、財産目録、収支予定表 マイナンバーが記載された資料は提出しないよう注意します
家庭裁判所の審理 本人・親族の意向、候補者、必要性を確認 照会書、面談資料、必要に応じて鑑定 候補者が必ず選ばれるとは限りません
審判・選任 後見人等と権限の範囲が決まります 審判書、後見登記事項証明書 審判確定後に後見事務が本格的に始まります
就任後の初期事務 本人の財産と収支を調査し、管理体制を整えます 財産目録、収支予定表、通帳・契約書類 期限内に家庭裁判所へ提出する書類があります

申立て前に親族の意向も整理する

家庭裁判所は、必要に応じて親族へ意向照会を行うことがあります。親族間に強い対立がある場合、親族候補者の選任が難しくなったり、専門職が選ばれたりする可能性があります。

ただし、親族全員の同意がなければ申立てできないという意味ではありません。本人保護の必要性が高い場合には、反対する親族がいても手続きを進めることがあります。対立があるなら、それを隠すのではなく、原因と経緯を整理して説明することが大切です。

診断書と本人情報シート

成年後見の申立てでは、本人の判断能力を確認するため、医師の診断書が重要な資料になります。また、本人情報シートは、福祉関係者などが本人の日常生活や支援状況を整理する資料として使われます。

診断書には、医学的な診断だけでなく、本人の判断能力に関する医師の見立ても記載されます。ただし、診断書だけで後見・保佐・補助が機械的に決まるわけではありません。家庭裁判所は、本人の生活状況、財産管理の状態、必要な契約、本人の意向、家族関係などを総合して判断します。

診断名と法律上の判断能力は同じではありません

認知症の診断を受けていても、すべての契約が直ちにできなくなるわけではありません。反対に、診断名が軽く見えても、具体的な法律行為を理解して判断できない場合は、後見等の利用を検討することがあります。

本人情報シートが伝えるもの

本人情報シートは、本人の生活状況、日常的な意思決定の様子、金銭管理、支援者との関係などを医師や家庭裁判所へ伝えるための資料です。ケアマネジャー、相談支援専門員、医療ソーシャルワーカーなど、本人の生活状況を把握している福祉関係者が作成することが想定されています。

診察室での短い会話だけでは見えにくい日常生活の状況を補う役割があります。たとえば、買い物はできるが請求書の支払いができない、同じ契約を何度も結んでしまう、施設入所の意味を理解できないといった具体的な情報が判断材料になります。

鑑定が必要になる場合

家庭裁判所が必要と判断した場合には、本人の判断能力について鑑定が行われることがあります。すべての事件で鑑定が行われるわけではありませんが、診断書の内容や本人の状態により必要性が判断されます。鑑定となれば追加費用や期間がかかるため、申立て前に可能性を見込んでおくと安心です。

費用と報酬の考え方

成年後見の費用は、家庭裁判所へ納める申立手数料、後見登記に関する手数料、郵便料、必要に応じた鑑定費用、戸籍や住民票などの取得費用、専門家へ依頼する場合の報酬に分けて考えます。

ここで混同しやすいのが、「申立て時にかかる費用」と「開始後に継続してかかる可能性がある報酬」です。申立て費用だけを見て判断すると、専門職後見人や監督人が選任された場合の継続負担を見落とすことがあります。

成年後見に関係する主な費用
費用区分 内容 支払時期 注意点
申立手数料等 収入印紙、登記手数料、郵便料など 申立て時 類型や申立内容、裁判所により必要額が異なることがあります
書類取得費用 戸籍、住民票、登記事項証明書、残高証明書など 準備時 財産や親族関係が複雑だと取得件数が増えます
鑑定費用 判断能力に関する医学鑑定の費用 家庭裁判所から指示された時 鑑定が実施される場合に必要です
申立書類作成報酬 司法書士等へ書類作成を依頼する場合の報酬 依頼時 支援範囲や事案の複雑さにより異なります
後見人等の報酬 就任後の後見事務に対する報酬 報酬付与審判後 家庭裁判所が事案に応じて決定し、本人の財産から支払います
監督人の報酬 後見監督人等が選任された場合の報酬 報酬付与審判後 後見人等の報酬とは別に発生する可能性があります

後見人等や監督人の報酬は、本人の財産から支払われます。金額は、後見人等が勝手に決めるのではなく、報酬付与の申立てに対して家庭裁判所が事案に応じて決定します。本人の財産額だけでなく、事務の内容、難しさ、特別な対応の有無などが考慮されます。

一律の総額では判断できません

郵便料、鑑定の有無、専門職後見人や監督人の選任、本人の財産内容、申立てを専門家へ依頼するかにより、総額は変わります。ウェブ上の一例だけで決めず、管轄家庭裁判所の最新案内と個別の見積りを確認してください。

親族と専門職の選任

申立書に親族を候補者として記載しても、その人が必ず後見人等に選任されるとは限りません。家庭裁判所は、本人の財産、家族関係、利益相反の有無、候補者の適性、本人の意向、事務の難しさなどを踏まえて選任します。

親族が本人の生活をよく知り、日常的に支援していることは大切な事情です。一方で、本人との金銭の貸し借りがある、本人の財産を家族の生活費と混ぜている、親族間に対立がある、候補者自身も遺産分割の当事者であるといった事情があると、選任に影響する可能性があります。

財産額が大きい場合、親族間に意見対立がある場合、不動産売却や遺産分割など利益相反が起きやすい場合、不正防止の必要が高い場合などには、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職後見人や監督人が選任されることがあります。

専門職が選ばれると何が変わるか

専門職後見人が選任されると、財産管理や裁判所報告を専門職が担当します。親族が日常生活の支援を続けることはありますが、預貯金や重要書類の管理、契約手続きは専門職が行う形になることがあります。

家族から見ると「知らない専門家に任せることになった」と感じるかもしれません。ただ、家庭裁判所は本人の財産保護と適切な事務処理を基準に判断します。候補者を出す段階で、専門職が選ばれる可能性と報酬の可能性まで理解しておくことが大切です。

利用前に知る注意点

成年後見制度は本人を守るために重要な制度ですが、利用前に理解しておきたい注意点があります。ここを知らずに申し立てると、「こんなはずではなかった」と感じやすいところです。

申立て後は自由に取り下げられるとは限りません

後見・保佐・補助開始等の申立書を提出した後は、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げられません。候補者が選ばれそうにない、専門職報酬がかかりそう、思ったより手続きが重い、といった理由だけで自由にやめられるものではありません。

目的の手続きが終わっても続く

後見等が開始されると、申立てのきっかけになった預金解約、不動産売却、遺産分割などが終わった後も、本人の判断能力が回復するか本人が亡くなるまで手続きが続くのが通常です。「家を売る一回だけ後見人を付けたい」という使い方が当然にできる制度ではありません。

家族の自由な相続対策は難しくなる

後見人等は本人の利益を守る立場なので、将来の相続税を減らすためだけの贈与、親族への資金援助、家族全体の都合による資産移転は難しくなります。本人が元気な頃に毎年贈与していたとしても、後見開始後に同じことを続けられるとは限りません。

本人の財産と家族の財産を明確に分ける

本人名義の預金を家族の生活費に使っていた、家族が立て替えた費用を記録していない、本人と同居家族の支出がひとつの口座から出ているといった場合は、整理が必要です。後見人等は、本人の財産と家族の財産を区別し、支出の根拠を説明できる状態にします。

本人が亡くなった後の事務もある

本人が亡くなると後見手続き自体は終了しますが、後見人等は家庭裁判所への終了報告、法務局への終了登記、相続人への財産引継ぎ、管理計算などを行います。成年後見人に限り、相続人が管理できるまでの保存行為や、家庭裁判所の許可を得た一定の死後事務を行える場合があります。

申立て前に確認したい核心

成年後見を始めた後の管理を、誰が、どのように、どのくらいの期間続けるのか。これを想像してから申し立てることが重要です。目の前の一件だけではなく、その先まで見る必要があります。

制度改正の公式確認

成年後見制度の見直しについては、現行制度と将来の改正内容を分けて確認する必要があります。法律案が国会で可決されたことと、改正制度がすでに利用できることは同じではありません。公布日、法律番号、施行日、経過措置を確認して初めて、実務上の適用時期を判断できます。

2026年6月21日時点の公式確認結果

参議院の第221回国会議案情報では、成年後見及び遺言の制度を利用しやすくする観点からの「民法等の一部を改正する法律案」について、衆議院本会議で2026年5月26日に可決され、参議院本会議で2026年6月17日に可決されたことを確認できます。

一方、同ページでは、2026年6月21日時点で公布年月日と法律番号の欄は空欄です。提出法律案では、施行は原則として公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内で政令で定める日とされています。

したがって、本記事では現行制度の後見・保佐・補助を中心に説明し、改正後の制度を現在利用できる制度としては扱いません。今後、公布日、法律番号、施行日、政省令、裁判所書式などが確定した段階で、現行記事を更新する必要があります。

法案・改正状況の切り分け
段階 2026年6月21日時点の確認 記事での扱い
検討段階・法制審議会での審議 制度見直しの背景として存在します 現行制度の説明と混在させません
法律案の国会提出 内閣提出法律案として2026年4月3日提出 法案段階の資料として扱います
衆議院での可決 法務委員会で2026年5月22日、本会議で2026年5月26日に可決 国会審議の経過として記載します
参議院での可決 法務委員会で2026年6月16日、本会議で2026年6月17日に可決 法律案が両院で可決された段階として記載します
公布 参議院議案情報上、公布年月日・法律番号は空欄 公布済みとは断定しません
施行 原則として公布から2年6月以内の政令指定日とする法案内容 改正制度を現行制度として案内しません

国会での審議経過と公布欄は、(出典:参議院「民法等の一部を改正する法律案」議案情報)で確認できます。制度改正の記事では、成立、公布、施行を分けて書くことが重要です。

司法書士が支援できること

司法書士は、成年後見に関する家庭裁判所提出書類の作成、戸籍や登記事項証明書などの必要書類の整理、不動産登記、後見登記に関する確認、相続登記との関係整理など、司法書士の業務範囲内で支援します。

こだま事務所では、本人の状態、必要な手続き、不動産や相続の有無、家族関係を確認し、成年後見を申し立てるべきか、他の制度で対応できる可能性があるかを整理します。最初から申立てありきではなく、目的から制度を選ぶ方針です。

司法書士が支援できる主な内容
支援内容 具体例 注意点
制度選択の整理 後見・保佐・補助、任意後見、他制度の違いを整理 最終的な類型や選任は家庭裁判所が判断します
申立書類の作成支援 申立書、事情説明書、財産目録、収支予定表など 事実関係と資料を正確に反映する必要があります
必要書類の整理 戸籍、住民票、診断書、財産資料、不動産資料 不足や古い資料がないか確認します
不動産・相続との連携 居住用不動産売却、相続登記、遺産分割との関係整理 利益相反や家庭裁判所の許可が問題になる場合があります
他士業との連携 紛争、税務、福祉上の課題を必要な専門家へつなぐ ひとつの専門職だけで完結しない案件もあります

専門家の業務範囲を分けて対応します

相続人間の対立、財産の使い込み、代理交渉、訴訟対応など紛争性がある場合は弁護士の対応が必要です。相続税、贈与税、譲渡所得税など税務判断が必要な場合は税理士への相談が必要です。介護サービスや地域支援の調整では、ケアマネジャー、社会福祉士、市区町村の相談窓口との連携も重要です。

相談から申立てまでの流れ

ご相談では、最初に「何のために成年後見が必要なのか」を確認します。預金の解約、不動産の売却、施設入所契約、遺産分割協議、財産の使い込み防止など、目的によって必要な資料や注意点が変わるためです。

次に、本人の判断能力、生活場所、財産、収支、家族関係を整理します。本人に判断能力が残っているなら、任意後見や財産管理委任など別の選択肢が残っている可能性もあります。

こだま事務所での一般的な進め方
段階 内容 確認のポイント
初回確認 本人の判断能力、生活場所、家族関係、必要な手続き、財産内容を確認します 何が今止まっているのかを具体化します
制度選択 後見・保佐・補助、任意後見、他制度の可能性を整理します 開始後の継続管理まで含めて比較します
資料案内 診断書、本人情報シート、戸籍、住民票、財産資料などを案内します 取得先、期限、記載漏れを確認します
書類作成 司法書士の業務範囲内で、家庭裁判所へ提出する書類作成を支援します 申立ての目的と事実関係を整合させます
申立て 本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します 費用、郵便料、提出方法を確認します
申立て後 家庭裁判所からの照会や追加資料の確認を支援します 候補者が必ず選任されるわけではありません

最初の相談で分からないことがあっても大丈夫です

財産がどこにあるか全部分からない、親族の戸籍がそろっていない、診断書をまだ取っていないという段階でも、何から始めるかを整理できます。むしろ、先に自己判断で大量の書類を集めるより、必要な範囲を確認してから動いたほうが無駄を減らせることがあります。

成年後見のよくある質問

家族が必ず後見人になれますか

必ず選ばれるとは限りません。家庭裁判所が、本人の利益、財産内容、家族関係、候補者の適性、利益相反の有無などを踏まえて判断します。専門職後見人や監督人が選任される場合もあります。

任意後見契約を結べばすぐに使えますか

いいえ。任意後見契約は公正証書で結びますが、効力が生じるのは、本人の判断能力が不十分になった後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときです。契約から効力発生までの期間を、見守り契約や財産管理委任契約で補う設計もあります。

後見人は介護や掃除もしてくれますか

身体介護、清掃、買い物などの事実行為そのものは、後見人等の本来業務ではありません。後見人等は、介護サービスや施設入所の契約、費用支払いなどを通じて本人の生活を支援します。

申立てをした後にやめられますか

申立書を提出した後は、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げられません。候補者が希望どおりに選ばれそうにない、専門職報酬がかかりそうという理由だけで、自由に取り下げられるとは限りません。

本人が反対していても申し立てられますか

後見開始や保佐開始では、本人の同意が申立ての絶対条件ではありません。ただし、本人の意向は重要な事情として確認されます。補助開始や保佐・補助の代理権付与などでは、本人の同意が必要となる場合があります。

後見人が本人のお金を家族に贈与できますか

本人の利益にならない贈与は、原則として難しいと考える必要があります。家族への援助や相続税対策だけを理由に本人の財産を減らすことは、後見人等の職務と合わない可能性があります。

一度だけ不動産を売るために利用できますか

成年後見は、特定の売却手続きだけを終えたら当然に終了する制度ではありません。後見等が開始されれば、その後も本人の財産管理と家庭裁判所への報告が続くのが通常です。

本人が亡くなった後も後見人の仕事は続きますか

本人の死亡により後見手続き自体は終了します。ただし、家庭裁判所への報告、終了登記、管理計算、相続人への財産引継ぎなど、終了時に必要な事務があります。

相談前に確認すること

成年後見の相談前には、本人の現在の状態と必要な手続きをできる範囲で整理しておくと、方針を決めやすくなります。すべて完璧にそろえる必要はありません。分かる範囲で大丈夫です。

相談前の確認項目

  • 本人の住所地、現在の居住場所、介護認定や診断の状況
  • 必要な手続きが預金、不動産、相続、施設契約のどれに関係するか
  • 本人がその手続きの内容や結果をどこまで理解できるか
  • 本人の戸籍、住民票、診断書、本人情報シートの準備状況
  • 預貯金、不動産、有価証券、保険、負債など財産の概要
  • 年金、家賃収入、施設費、医療費など毎月の収支
  • 親族間で意見対立や利益相反があるか
  • 候補者になりたい親族がいるか、専門職後見人を想定するか
  • 過去に任意後見契約、財産管理委任契約、家族信託を結んでいないか

持参すると確認しやすい資料

本人の保険証や介護保険証、診断書、通帳の写し、固定資産税納税通知書、登記事項証明書、保険証券、年金額が分かる資料、施設の見積書、遺産分割関係書類などがあると、具体的に整理しやすくなります。

ただし、原本を無理に持ち出す必要はありません。本人の生活に必要な通帳や重要書類を紛失しないよう、コピーや写真で確認できる場合もあります。

本人が住んでいた実家や空き家の管理・売却が関係する場合は、後見申立てだけでなく不動産の現状確認も必要です。空き家管理や実家整理の考え方は、必要に応じて空き家・実家の相談もご確認ください。

成年後見サポートのまとめ

成年後見制度は、判断能力が十分ではない本人を法律的に支援し、権利と財産を守る制度です。現行制度では、法定後見として後見・保佐・補助があり、本人の判断能力や必要な権限に応じて家庭裁判所が判断します。

後見は広い代理権を伴う一方、保佐と補助は必要な法律行為に範囲を絞って権限を付けることができます。ただし、どの類型になるか、誰が後見人等に選ばれるか、どの権限が認められるかは、申立人の希望だけで決まるものではありません。

任意後見は、本人に判断能力があるうちに将来の代理人を決めておく制度です。ただし、任意後見監督人が選任されるまで効力は生じず、原則として法定後見のような取消権はありません。将来の備えとして使うなら、財産管理委任契約、見守り契約、遺言書などとの役割分担も重要です。

成年後見は、申立て後に自由に取り下げられるとは限らず、家族が必ず後見人に選ばれるわけでもありません。申立てのきっかけになった預金解約や不動産売却が終わっても、本人の判断能力が回復するか亡くなるまで、継続的な財産管理と家庭裁判所への報告が続くのが通常です。

後見人等の職務は、財産管理と身上保護に関する法律行為が中心です。身体介護や清掃などの事実行為は本来業務ではなく、医療同意、遺言、婚姻など、後見人等が当然に代理できない事項もあります。

だからこそ、成年後見を利用するかは、「今困っている手続き」だけでなく、「開始後の生活と財産管理をどう続けるか」まで見て判断する必要があります。制度を使うこと自体が目的ではありません。本人にとって最も安全で、意思を尊重できる仕組みを選ぶことが目的です。

こだま事務所では、成年後見の申立書類作成、不動産や相続登記との関係整理、必要書類の確認などを司法書士の業務範囲内で支援します。紛争性がある場合は弁護士、税務判断が必要な場合は税理士、生活支援が必要な場合は福祉関係者と連携しながら、本人にとって安全な進め方を確認します。

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