会社・法人登記

フリーランスと個人事業主の違い|会社員の副業を整理

こんにちは。こだま司法書士です。

会社員のまま副業を始めると、「業務委託で働けばフリーランスなのか」「開業届を出したら個人事業主になるのか」「自営業とは何が違うのか」と迷いやすいものです。これらは似た場面で使われますが、同じ基準で分ける言葉ではありません。

この記事では、フリーランスと個人事業主の違いを、働き方、事業を営む主体、日常的な呼び方という三つの視点から整理します。会社員の副業、開業届、一人会社、雇用との境界も確認し、自分の状況を説明するときにどの言葉を使えばよいか判断できるようにします。

  • フリーランスは主に働き方を表す言葉
  • 個人事業主は法人を作らず個人で事業を営む人
  • 会社員とフリーランスは同時に成り立つ場合がある
  • 開業届や契約名だけで立場を決めない

フリーランスと個人事業主の違い

最初に押さえたいのは、二つの言葉が対立する選択肢ではないことです。フリーランスは、雇用されずに業務委託を受ける働き方を示すときに使われます。個人事業主は、法人を設立せず、個人として事業を営む人を表す実務上の呼び方です。そのため、同じ人が両方に当てはまることがあります。

言葉 主に示すもの 典型的な使い方 ほかの言葉との重なり
フリーランス 働き方・受注形態 雇用ではなく業務委託で仕事を受ける 個人事業主や一人会社と重なる場合がある
個人事業主 個人で事業を営む立場 法人を作らず継続して事業を行う フリーランスや店舗経営者を含み得る
自営業 独立して生計を立てる人の総称 店舗経営者、個人商店、専門職など 個人事業主や小規模法人の経営者を指す場合がある
会社員 勤務先との雇用関係 雇用契約に基づき賃金を受け取る 副業部分ではフリーランスになる場合がある

フリーランスは働き方を表す

一般にフリーランスは、特定の会社に雇用されるのではなく、自分で取引先と契約し、仕事を受けて報酬を得る働き方を表します。よく見られる契約は請負、委任、準委任などですが、職種はエンジニア、デザイナー、ライターに限られません。撮影、講師、コンサルティング、配送など、さまざまな仕事で使われる言葉です。

一方、「フリーランス」は、いつでも同じ範囲を示す法律上の身分名ではありません。2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、業務委託の相手方である事業者のうち、従業員を使用しない個人や、一定の一人会社を「特定受託事業者」として定義しています。一般にフリーランスと呼ばれる人すべてが、この法律の対象になるとは限りません。

法律上の対象や発注者の義務を確認するときは、公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」を確認してください。普段の自己紹介としてのフリーランスと、特定の法律で定義される対象を分けることが大切です。

副業の働き方と事業上の立場を整理する会社員

個人事業主は個人で営む事業者

個人事業主は、株式会社や合同会社などの法人を設立せず、個人として事業を営む人を指す実務上の呼び方です。自宅で受託業務を行う人だけでなく、店舗を持つ飲食店主、美容室の経営者、農業や小売業を営む人なども含まれます。

フリーランスとの違いは、仕事の受け方だけに注目する言葉ではない点です。たとえば、顧客から案件ごとに仕事を受ける個人のデザイナーは、フリーランスであり個人事業主でもあります。これに対し、自分の店舗で商品を販売する人は個人事業主ですが、日常会話ではフリーランスより自営業や店舗経営者と呼ばれることが多いでしょう。

税務では、事業所得か業務に係る雑所得かなど、申告上の所得区分を別に確認します。「個人事業主と名乗っている」「開業届を出した」という事実だけで、所得区分が自動的に決まるわけではありません。活動の規模、継続性、帳簿書類の保存など、実態に基づく判断が必要です。

自営業は広い日常表現

自営業は、雇用されて働くのではなく、自ら事業を営む人を広く表す日常的な言葉です。個人事業主を指すことが多い一方、小規模な会社の代表者を自営業者と表現する場合もあります。法律や税務の手続で一律に範囲が決まる用語ではないため、使用する場面に注意します。

たとえば、家族で飲食店を経営する個人事業主は「自営業です」と説明するのが自然です。一方、企業からシステム開発を受託する人は「フリーランスです」と説明する方が働き方を伝えやすいでしょう。どちらも個人で事業を営んでいれば、税務手続では個人事業として扱う場面があります。

言葉が示す軸を分けます

フリーランスは仕事の受け方、個人事業主は個人で事業を営む立場、自営業は独立して事業をする人の広い呼び方です。どれか一つだけを選ぶのではなく、説明したい内容に合わせて使い分けます。

三つの言葉は重なって使われる

実際の働き方は一つの言葉だけでは説明できません。勤務先との雇用関係、取引先との契約、法人の有無、従業員の有無などを重ねて見ると、自分の立場を整理しやすくなります。

会社員 フリーランス 個人事業主 自営業
勤務先とは雇用、副業は業務委託 本業で該当 副業で該当し得る 事業実態により該当し得る 副業部分をそう呼ぶ場合がある
個人で継続受注するデザイナー 通常は該当しない 該当しやすい 該当しやすい 該当し得る
個人で店舗を営む店主 通常は該当しない 一般には呼ばれにくい 該当しやすい 該当しやすい
従業員のいない一人会社の代表者 会社との関係は別途判断 法律上含まれる場合がある 該当しない そう呼ぶ場合がある

この表は一般的な整理です。契約名や自己紹介だけで法的な扱いが決まるわけではありません。同じ人でも、本業では会社員、副業ではフリーランス、事業全体では個人事業主というように、関係ごとに複数の言葉が成り立ちます。

契約と事業記録を無地の書類で分類する副業会社員

開業届だけで立場は決まらない

一般に開業届と呼ばれる「個人事業の開業・廃業等届出書」は、個人で事業を始めたときに税務署へ提出する書類です。国税庁は、個人で事業を始めたときの手続として案内しています。ただし、開業届はフリーランスになるための許可証や資格証ではありません。

開業届をまだ出していなくても、会社員が独立した立場で業務委託を受けていれば、一般的な意味でフリーランスと呼ばれることがあります。反対に、開業届を出した店舗経営者が、普段はフリーランスと名乗らないこともあります。また、開業届を出した事実だけで、その収入が必ず事業所得になるわけではありません。

開業届の様式や手続は国税庁「個人で事業を始めたとき」で確認できます。提出時期や準備を具体的に知りたい方は、次章の副業の開業届はいつ出すかへ進んでください。本章では、提出時期ではなく言葉の関係だけを整理します。

契約名より働き方の実態を見る

契約書に「業務委託」「フリーランス」と書かれていても、実際には発注者から勤務時間や仕事の進め方を細かく指示され、仕事を断る自由が乏しく、労務の対価として報酬を受けている場合などは、労働基準法上の労働者に該当する可能性があります。

厚生労働省は、名目上は自営業者でも、労働者に当たるかどうかは働き方の実態を基に判断すると案内しています。判断では、仕事の依頼を断る自由、指揮監督、勤務場所や時間の拘束、報酬の性質、事業者としての独立性など、複数の事情が考慮されます。

自分の働き方に疑問がある場合は、厚生労働省「労働者とは」の判断資料や相談窓口を確認してください。フリーランスという呼び方を選ぶことと、労働関係法令の適用を受けるかどうかは別の問題です。

契約の表題だけで判断しません

会社員、フリーランス、個人事業主という呼び方より、誰の指示で、いつどこで、どのように働き、どの契約に基づいて報酬を受けるかを確認します。実態が労働者に近いと感じる場合は、労働基準監督署等の窓口へ相談してください。

自宅で取引先との副業打ち合わせを行う会社員

フリーランスと個人事業主の違いを判断

自分がどの言葉に当てはまるかを確認するときは、職業名から決めるのではなく、雇用関係、業務委託、事業の継続性、法人の有無の順に整理します。税務申告、契約、プロフィールでは求められる情報が異なるため、すべての場面で同じ言葉を使う必要はありません。

会社員の副業は契約で整理する

会社員が副業をする場合、本業では勤務先との雇用関係が続きます。そのうえで、副業先とも雇用契約を結んで賃金を受け取るなら、副業部分も労働者として働く形です。一般には、この副業をフリーランスとは呼びません。

一方、自分で取引先と業務委託契約を結び、成果物の納品や役務の提供に対して報酬を受けるなら、副業部分はフリーランスと呼ばれることがあります。その活動を個人として継続的に事業として営んでいる場合は、個人事業主という説明も重なります。

  1. 本業と副業それぞれの契約相手を分ける
  2. 雇用契約か業務委託かを確認する
  3. 仕事を断る自由や指揮命令の実態を確認する
  4. 個人で継続して事業を営んでいるか整理する
  5. 税務上の所得区分と申告手続を別に確認する

副業の所得税の確定申告が必要になるかは、フリーランスと名乗るかでは決まりません。給与、売上、必要経費、所得区分などを確認する必要があります。詳しくは前章の副業の確定申告はいくらから必要かをご覧ください。

法人でもフリーランスに含む場合

法人を設立し、その事業を法人で行う場合、契約や請求は会社が主体になります。代表者個人は、その法人事業について個人事業主ではありません。ただし、フリーランス法では、代表者一人だけで他の役員がおらず、従業員を使用しない法人も、一定の要件で特定受託事業者に含まれます。

この点からも、フリーランスは個人事業主と完全に同じ意味ではないと分かります。もっとも、法人にするか個人事業のまま続けるかは、責任、税務、社会保険、維持費、契約、資金調達などを含む別の判断です。本章では法人との比較へ広げず、フリーランスという働き方が法人形態と重なる場合があることだけを押さえます。

場面ごとに名乗り方を整理する

自己紹介では、相手が知りたい内容に合わせて言葉を選びます。取引先へ働き方を説明するなら「フリーランス」、税務や事業形態を説明するなら「個人事業主」、日常会話で広く説明するなら「自営業」が分かりやすい場合があります。

場面 伝える内容 注意点
プロフィール 職種、提供サービス、フリーランス等の働き方 資格や実績を誇張しない
契約・請求 契約主体となる個人名、屋号、住所等 取引先名を自分の勤務先として書かない
税務手続 事業内容、所得区分、売上・経費の記録 通称ではなく申告書の項目に従う
勤務先への申請 副業内容、契約形態、競業や情報管理 就業規則と実態に沿って説明する

屋号を使っていても法人になるわけではなく、屋号は個人の事業上の名称です。書類ごとに指定された欄や説明を確認し、分からない欄を自分の判断で置き換えないようにします。契約主体や雇用関係を誤って記載すると、相手方の確認が取れないことがあります。

副業の契約形態と事業上の立場を相談する会社員

よくある質問

開業届を出せば個人事業主ですか?

開業届は個人で事業を始めた事実などを税務署へ届ける手続です。一般には個人事業主としての手続の一つですが、提出だけで所得区分、許認可、労働者性が決まるわけではありません。実際の事業内容と必要な手続を別に確認します。

会社員の副業でもフリーランスですか?

副業を業務委託として独立して受ける場合は、一般的にフリーランスと呼ばれることがあります。副業先とも雇用契約を結んで働く場合は、通常は労働者としての副業です。契約名だけでなく働き方の実態を確認してください。

アルバイトはフリーランスですか?

アルバイトは一般に雇用契約に基づき、使用者の指揮命令下で賃金を受け取る働き方です。そのため通常はフリーランスとは区別します。ただし、契約書の名称と実態が異なる場合は、実際の働き方から判断します。

法人を作るとフリーランスではなくなりますか?

事業を法人へ移し、その事業の契約や請求を法人で行う場合、代表者個人はその法人事業について個人事業主ではありませんが、一般的な働き方としてフリーランスと呼ばれる場合があります。フリーランス法でも、従業員を使用しない一定の一人会社は対象に含まれます。

自営業と個人事業主は同じですか?

日常会話では同じように使われることがありますが、自営業の方が広い表現です。個人事業主だけでなく、小規模法人の経営者を自営業者と呼ぶ場合もあります。税務や契約では、より具体的な事業形態を確認します。

フリーランスと個人事業主の違いまとめ

フリーランスと個人事業主の違いは、言葉が示す軸にあります。フリーランスは主に雇用によらず業務を受ける働き方、個人事業主は法人を設立せず個人で事業を営む立場、自営業は独立して事業を行う人を広く表す日常的な言葉です。

同じ人が会社員とフリーランス、フリーランスと個人事業主の両方に当てはまることもあります。反対に、店舗を営む個人事業主がフリーランスと呼ばれない場合や、一人会社がフリーランス法の対象になる場合もあります。どれか一つを選ぶのではなく、雇用関係、契約、法人の有無、事業の実態を順に確認してください。

次に検討するのは、個人で事業を始めた事実をどのように整理し、開業届をいつ提出するかです。開業届はフリーランスになる許可ではありませんが、個人事業を始めた後の重要な税務手続の一つです。提出時期と準備は第5章で確認しましょう。

最終確認

本記事は一般的な用語と制度の関係を整理したものです。税務上の所得区分、労働者性、契約上の権利義務は個別の実態により変わります。正確な情報は国税庁、公正取引委員会、厚生労働省等の公式サイトをご確認ください。最終的な判断は、内容に応じて税務署、税理士、労働基準監督署、弁護士等の専門窓口へご相談ください。

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